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C-KOM の FREE WALK AVENUE

「大容量ディスク「4.7G/9.4G DVD-RAM」の使い心地」

2001.01.18

大容量バックアップの限られた選択肢
遅い遅い!偽りの転送速度
フォーマットの種類と有効性。UDF-1.5は意味無し。
過度の期待は禁物。割り切って使いましょう。
みなさんは自宅で使っているPCのHDDは全部で何GBありますか? そのバックアップはどうやっていますか? え、やっていない!?それは危ないですよ。 いまやHDDのクラッシュは故障が原因ではなくウィルスに起因するものばかりですから。 HDDは多くても、バックアップする必要のあるデータはそれほど多くないという方も多いですよね。 それでも最近はMOやCD-Rに1〜2枚で収まるという方は少ないはず。 そうなると次に選択すべきなのは…、果たしてDVD-RAM以外の選択肢を見つけられますか?

大容量バックアップの限られた選択肢

ネット接続を常時接続(フレッツISDN)にして以来、「ウィルス発病→ディスク壊滅」という 危険がどこに迫っているとも知れない状況を強く認識するようになりました。 自宅のHDDは既に10GB+20GB+40GBで総計70GBになっているのですが、 これらのデータは全くバックアップを取ってありませんでした。 万が一クラッシュに遭遇したことを想像すると、それはもう寒気のする世界です。 クラッシュといっても、OSやアプリケーションであれば、CD-ROMさえあればいつでも再インストールが可能ですし、 デバイスドライバやフリーソフト、自分好みの環境だって、恐ろしく面倒ですが 再構築が出来ないわけではありません。 しかし自分で作ったデータの数々、特に自作の音楽CD用データやMIDIデータ、WWWページ用データ、 メイル文書などが消えてしまったら、本当に取り返しがつきません。 それを考えると、バックアップ体制が皆無な現状は、

常に死の一本橋を渡っているような状態


なのです。ただ本人がそう認識していなかっただけで…。

そういう「無くなったら再インストールだけでは済まない」データ系のファイルが、 探してみると意外と多いのに気が付きます。考えてみると自作音楽CDのWAVデータ などだけで5GBもあるわけで、いろいろあって私の場合なんと10GB〜20GBもありました。 これをバックアップするメディアといったら、選択肢はかなり限られてきます。

世間でいう大容量メディアといえば、以下のような種類があります。容量で分類してみました。 本来、大容量バックアップで最もポピュラーなのはMO系かCD-R系なわけですが、 私の場合は上記のような事情で、

既にGIGAMOさえも対象外


となってしまいました。 10GB以上のデータをバックアップするには、GIGAMOでさえ10枚が必要なのです。 まして640MBのMO(のドライブも持っていますが)でバックアップしようと思ったら、 20枚になってしまいます。こうなってしまうと、どのファイルをどのディスクに入れようか、と 切り分けを考えているだけでも頭が痛くなってきます。

休日がいくらあっても足りません。(ありませんが)


というわけで、少なくとも1枚2GB以上、できれば5GB近いものを選びたいと考え、 DVD-RAMを選びました。ちなみにDVD-RAMを買う決断をした2000年8月当時、 ORBの5.7GB版はまだ発売されていませんでした(2000年年末に発売予定)。

余談ですが、雑誌の記事でよく「大容量バックアップメディアはこれだ!」という感じの 記事を見かけます。そこでは必ずと言って良いほど「MOか?CD-R/RWか?それともDVD-RAMか?」 という感じの比較がありますが、ここにCD-R/RWが入っていることに強烈な違和感 を感じるのは私だけでしょうか?現状、CD-R/RWは明らかに用途が違って「CDのデッドコピー」が主な用途です(きっぱり)。 その次が「データ配布/持ち運び」の用途で、データの保存/バックアップを目的でCD-R/RWドライブを買う人は ほとんど居ません(もしCDのデッドコピーが出来なかったら、CD-R/RWも こんなに流行る機器にはならなかったでしょう)。というわけで、私はこういった比較に CD-R/RWを含めてあると何となくおかしな気分になり、「

CD-R/RWはデフォで買って、


それ以外に必要なら追加購入を検討する」のが正しい姿だと思いますが、如何に?

遅い遅い!偽りの転送速度

そんなわけで追加購入機器が必要だった私は、俗に第2世代DVD-RAMドライブと呼ばれる、 片面4.7GB/両面9.4GBメディア対応のDVD-RAMドライブ「Panasonic LF-D200JD」を、 店頭価格59,800円で購入しました(8月時点。今はもう少し安くなっているハズ)。 同時にメディアも購入しましたが、8月当時は片面2.6GBあるいは両面5.2GBのメディアしか 売っていませんでしたので、とりあえず5.2GBのものを数枚(1枚2000円ちょっと)買いました。 今は4.7GBや9.4GBののメディアをたくさん買い込んでいます。 ちなみに、9.4GBのメディアは今でも品薄で、通常のショップで見つけることはまず不可能です。 9.4GBメディアに出会うには、秋葉原を足を使って探し回ることになるでしょう。

DVD-RAMの両面メディアについてご存じない方のために、一応解説。 DVD-RAMの両面メディアは、カセットテープのようにA面/B面があり、 まさにカセットテープと同じくひっくり返して挿し込んで使います。 つまり両面5.2GBといいつつ、1枚分のメディアの中に2.6GBが2枚入っているような ものです。これがどういうことかと言いますと、

A面/B面を連続領域として使えない


ということで、例えば、両面5.2GBのメディアに4GBのファイルをコピーすることはできません。 では900MBのファイルは何個入るでしょうか?片面は2.6GBですから3個(2.7GB)は入りません。 すると片面2個、両面合わせても4個(3.6GB)しか保存できません。これは極端な例ですが、 「1枚に5.2GB保存できる」と計算していると痛い目に遭う場合があります。 もちろん9.4GBメディアでも同様です。

気になるのはやはり使い心地。記憶メディアの場合はとりわけ「速度」が重要になることは 言うまでもありません。しかし、この「速度」の点では、DVD-RAMの使い心地はかなり悪いと言わざるを得ません。 PanasonicのサイトでLF-D200JDのスペックを見てみると、4.7GBメディア使用時のデータ転送速度は 2,770KB/sという記述があります。2,770KB/sというと、CD-Rでいえば「18倍速」に相当します。 これだけ見れば割と高速なようにも思えますが、これを信用していると

買った後にショックを受ける


ことでしょう。 「データ転送速度」という表現で誤魔化してありますが、実際にはREAD時の最大値のことを示しているようです。 実際に使用してみると、WRITE時はその数分の1であることが判ります。


データ総量ファイル数WRITE時間WRITE速度CD-Rでいうと
テスト1620MB19分49秒1,053KB/s7倍速相当
テスト2620MB53417分11秒601KB/s4倍速相当


テスト1を見ると判るとおり、DVD-RAMの得意とする、1つの巨大なファイルを書き込む場合でも、 速度は1,053KB/sまで落ち込みます。 これはすでにCD-Rの7倍速相当です。DVD-RAMの苦手とする細かいファイルの書き込み(テスト2)では、 同じ620MBの書き込みでも倍近い時間が掛かっています。 書き込み速度は601KB/sまで落ち込み、CD-Rでは4倍速相当です。

よくよく考えても見てください。本来、記憶容量が増えたら、それに見合う読み書き速度が必須になります。 というのも、大容量のメディアが欲しいということは、従来より遙かに大きいデータを 頻繁に読み書きしたいからに他なりません。もし容量が10倍に増えたのに、読み書きの速度が従来と同じ であったら、メディア1枚の読み書き時間はそのまま10倍になってしまうことになります。 このような理由のため、容量と速度を比例して進化させることは、 この手の記憶メディアの1つの至上命題となっているのです。

ところが、CD-RとDVD-RAMを比べると、容量は7倍以上になっているのに、速度は1/2から1/3になっています。 これは大問題です。4.7GBのメディア1枚をフルに書き込むためには、 テスト1のような巨大ファイルの場合でも1時間13分、テスト2のような細かいファイルの集まりだと なんと2時間08分も掛かってしまいます。当然バックアップ用途としては、 テスト2のような細かいファイルをコピーすることになりますので、 つまるところ「1枚につき2時間」がDVD-RAMでいう通常の使い方であるというわけです。 実用的で無いとまでは言いませんが、

かなりストレスメーカーな機器


であることは間違い有りません。 これはPanasonicのドライブに限らず、日立でも東芝でも、その他のメーカーのドライブでも 同様と聞いています(東芝製は若干速いそうですが、本当に「若干」だそうです)。 これからDVD-RAMを活用したいと考える方も、 「DVD-RAMがあれば大容量データもスパッとコピーできるから」などとは期待しないほうがよいでしょう。

フォーマットの種類と有効性。UDF-1.5は意味無し。

ところで、DVD-RAMメディアを使う場合には、以下の4つのフォーマット形式のうちのいずれかを選んで、 フォーマットして使うことになります。

フォーマット名最大容量特徴
UDF-1.54.26GB 大容量ディスクの読み書き標準として作られたフォーマットで、Win95/98/NT/2000およびMacでも ドライバを介して読み書き可能。DVD-RAMでは標準的なフォーマットとされている。
UDF-2.04.26GB UDFの上位バージョンだが、映像記録用として規定されたフォーマット。 UDF-1.5とは異なりMacやWinNTでは読める環境がなく一般的にメリットは薄い。
FAT324.26GB Win98から使われたフォーマットで4.26GBがフル使用可能。ただしMS-DOS/WinNTは×で、 Win95でもリビジョンが古いと読めない。Win98/Win2000以降で使用可能。
FAT16(VFAT)2.00GB MS-DOS/Win95で使われたフォーマット。最大2.0GBまでしか認識できない。 ただしMS-DOS/Win95/WinNTなどの古いOSから読み書きが可能。


FAT16(VFAT)は、折角の4.7GBメディアも半分以下しか使用できないため、「MS-DOSから使いたい」などの 特別な要求がない限りこのフォーマットを使うことはありません。UDF-2.0についても、 家電等での映像記憶用途を想定して開発されたフォーマットで、UDF-1.5に比べて大きなメリットがあるわけでもなく、 対応環境(OS)も少ないため、あまり使われることはありません。 よって、残る2種類のフォーマット「UDF-1.5」と「FAT32」が、DVD-RAMで一般的に使用されるフォーマットになります。

この状況からすると、Win98/Win2000でしか使えないFAT32よりも、 標準であるUDF-1.5のほうを使うのは当然の流れといえます。 もしかしてWinNT4.0から読みたくなることもあるかもしれませんし(ないと思いますが)、 万が一、Macで読みたくなっても大丈夫です(もっとありえませんが)。 DVD-RAMを使い始めた人は誰でも1度は「全部UDF-1.5にすれば大丈夫だろう」と思うはずです。

ところが、このUDF-1.5に、とんでもない不具合が発覚します (正確に不具合かどうか定かではありませんが)。 沢山のディレクトリやファイルをDVD-RAMにコピーして使っていると、 そのうちコピーした

ファイルやディレクトリが無くなってしまったり


アクセスできないディレクトリができてしまったりするのです。何度か試してみましたが、さっきまであったディレクトリが 別のファイルを書き込んだとたん消えてしまったり、表示がおかしくなったりします。これではとてもバックアップどころ ではありません。そこで早速Webで調べてみたところ、期待した情報とは違うのですがこんな記事がありました…。

長いファイル名(半角8文字を越えるファイル名)と短いファイル名を
混在してご使用の場合、ファイルコピーや移動が正常にできない場合があります。
これは現行のUDFファイルシステムの仕様上の制限です。



一瞬目を疑いたくなるような記述です。 Windowsでロングファイルネームや日本語ファイルネームが散乱した状況が当たり前のこのご時世に、 一体どういうつもりなのでしょう?? ただ、これは1998年半ば頃に出回った情報で、文章の対象としている環境は、2.6G版の第一世代DVD-RAM、 ドライバはSAI社のWriteDVD!という環境のようです。 その後の情報を見るとなかなか面白いです。WriteDVD!のバージョンが上がるごとに制限事項が変化していって、曰く、 「ロングファイルネームを使っても良いが"#"の文字だけは使うな」とか、 「"+"や"&"だけは使用禁止だ」とか、 結局トラブルが完全に直ったという記事を見かけません。大体からして、上記の通り、

UDFの仕様自体の不具合


なのであって(「仕様」だから「不具合」ではないというのは甘い)、 ドライバがその尻拭いのために頑張るということ自体がドコか間違ってます(^_ ^; 仕様の不具合に触れないようにドライバが中間で細工を施すように変更したとしても、 それってもしかしてドライバが変わったら読めなくなるのでは???

私の使っているLF-D200JDは、SAI社のWriteDVD!ではなく、Panasonicオリジナルのドライバが使用されているのですが、 それでも上記のとおり、おかしな動作を体験してしまいました。そこで結局、私はすべてのディスクを FAT32フォーマットで使用しています。これで何の問題もないのですから、 無理して標準フォーマットを使う必然性もありませんので…。少なくとも私はUDFには強い不信感を持ちました。

ちなみに、UDFの有効な使い道を探すとすれば、 最近の「UDF対応DVD-ROM」では、UDFで書き込んだDVD-RAMがそのまま読めるそうです。一応フォローしておきます(笑)

過度の期待は禁物。割り切って使いましょう。

UDFの不具合はFAT32を使っていれば全く問題ないとは言え、やはり書き込み速度の遅さは問題です。 読み込み速度の方もそれほど速いとは言えませんが、これは許容範囲内でしょう。 ちなみにDVD-ROM としての使い心地はなかなか良いです(笑) 私の環境には今までATAPI接続のDVD-ROMドライブがあったのですが、これがATAPIに4台とも接続しているからなのか、 6倍速にもかかわらずDVD-Video再生がスムースにできなかったのですが、 このLF-D200JDはSCSI接続のため、非常にスムースな再生ができてビックリです。 とはいえ、それはあくまで付加的な要素であって、DVD-RAMの本来の使い方とは言えませんので、ご参考程度です。

ところで大容量のデータをバックアップする手段は、DVD-RAMのようなリムーバブルメディア だけとは限りません。全く別の視点として、 「ミラーリング」という手段もあります。RAID-0と呼ばれるミラーリングでは、全く同じ要領のHDDを 2台繋げ、常に2台を同時に書き込むことで、一方が壊れてももう一方からデータが無事に読み出せる、 という原理でデータを守ることができます。パワーユーザは好んでこの方法を利用するようです。 ディスクが数十GBに及んでくると、DVD-RAMのようなメディアでは丸ごとバックアップするのに結構な 労力が必要になってしまうため、

「もはやバックアップといえばミラーしかっ!」


とおっしゃる方も居ます。

ですが、ミラーリングのような動的バックアップは、本来は静的なバックアップ (ここでいうDVD-RAMのような別メディアを使って一定期間ごとにとるバックアップ)と併用するものです。 その理由に、ミラーリングは物理クラッシュに強くても、ソフトクラッシュに弱いという事情があります。 例えば、RAID-0でミラーリングをしているときに、 ウィルスが大事なファイルをガリガリ書き換えて しまったことを想像してみてください。OSやRAIDコントローラは、それが危険な書き込みだとは知りようがありませんから、

大事に大事に2つのディスクに同時に上書きして


しまいます。あっと思ったのもつかの間、完璧にバックアップして いると思っていたファイルは無惨に消されてしまうのです。こんなときのためにも、メディアに保存する バックアップにはそれ相応の価値があるわけです。

DVD-RAMは数少ない大容量リムーバブルメディアの1つとして、 凄く満足とは言えないまでも、それなりの使い心地は提供してくれます。 バックアップだけでなく、あまり大事でないファイルを一時的にHDDから待避させる用途に使用したりすることも多く、 とにかく「書き込み速度」だけに目をつぶれば便利なツールになります。DVD-RAMを購入する/使うには、 そういった割り切りが必要になることでしょう。 これに変わるメディアもしばらく出ないようですし、 とりあえず長い目で見て使ってあげることにしましょうか。

 

ご意見、ご感想は、 とらんぱ伝言板 または、 C-KOM(c-kom@mbf.nifty.com) まで。

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