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C-KOM の FREE WALK AVENUE

「ISDNによる電話回線共有作戦」

1999.10.28

ISDNは2回線。家族が同時にインターネット!
無線Aterm「IW50/D」の機能と使用法
ISDN導入成功
ダメダメじゃん、無線アナログ
良くも悪くも同時インターネット

物理的に電話線を引くことの出来ない部屋でインターネットに接続したい…。 以前は夢物語と思われたこんなリクエストも、最近では叶えてくれる無線機器が 安価で登場するようになってきました。幸い私の自宅では、自分の部屋に 家族とは別の電話回線を通信専用として引いていますので、特に無線には 興味を持っていなかったのですが、今回、何の因果か無線TAを買ってISDNに チャレンジする羽目に…。

ISDNは2回線。家族が同時にインターネット!

隣の部屋に居る兄が突然「インターネットってどうやるの?」と言い出しました。 今まで全然そんなそぶりもありませんでしたので、少々びっくりしてしまいましたが。 ちなみにそこで、

インターネットというのはサービスじゃなくてインフラの名前でね…


などとウンチクをかます時代はとっくに過ぎたと思っています(笑) 日本では「インターネットする」は 立派な動詞 として広辞苑に載っているくらいです(嘘)。 ともあれ、インターネットをしたいからパソコンを使う、という構図が 非常に多くなってきているのには、戸惑いと共に嬉しさを感じますね。 パソコンに本当の意味での「キラーアプリケーション」が現れたと言っても いいでしょう。

さて、話を元に戻しますが、インターネットしようにも(「インターネットする」は この先も遠慮なく使います)、兄の部屋には電話線がありません。「また1本引けば?」 と勧めたのですが、どうも乗り気でない様子。確かに家族で3回線持つというのは 私としても多少気が引けるところがありますので、 だったら無線を使って、 解決してやろうということになりました。本当のことを言うと、 私が無線の能力に興味があって

実験台にした


わけですが、立派な人助けだし(?)、まして身内だし、失敗してもまぁいいか的感覚でした(笑)

ひと口に無線といっても、いろいろ選択肢があります。
  1. 家族で使っているほうの電話に無線モデムを繋げる。
  2. 私のWindowsSEマシンのルータ機能を使って無線LANサーバにする。
  3. ダイアルアップルータを私の回線に繋げて、そこに2台のマシンを接続(1台無線)する。
まず1は除外。インターネット中に家族の電話が使えないと大変です。 そして2は、私のマシンがずっと起ち上がっていないといけません。 Windows98をサーバにしようなんて100年早い わけで、これも却下です。 そして、3番目の選択肢はそれなりに現実味はあるのですが、 しかし、基本的にルータは1つの接続を複数のパソコンに振り分ける 形になります。つまり接続情報などは全て共有しなければなりませんので、 「プロバイダはNIFTYに限定」「メイルアドレスは家族用追加アドレス」 「課金は全部ゴチャ混ぜ」という悲しい状況になります。 まして兄は「おまえと同じプロバイダはいやだ。DIONがいい」 と言い出したから大変。 何故DION!? という話は置いておくにしても、これでは上記のような方法では実現できません。 そこで、 という形を考えました。ご存知の通り、ISDNは電話機2台分の能力を 持っています。ISDNはデータを送るBチャネル2本、制御信号を送るDチャネル1本 を合わせ持っており、このBチャネルは

全く別々の回線として使用可能


なのです(別々というからには、同時に2本使うと電話料金は2倍掛かります)。 この仕組みを利用すれば、別々のプロバイダに繋いで通信ができるハズ! しかもそのうち1台は無線という、 結構ギミックなお話なのですが、ちょっと製品を探してみたところ、 それにピッタリの製品「NEC Aterm IW50/D」があったのです。 かくして、ISDN化が真剣に検討されましたのであります。

無線Aterm「IW50/D」の機能と使用法

では、このIW50/DというTA(ターミナルアダプタ)でどんなことが出来るのか を見てみることにしましょう。もちろん通常のTAとしての機能(デジタル通信機能、 アナログ変換機能)は備えています。それ以外にリモートステーション「RS10」という 機器を用意すると、そこでも無線を通じてデジタル、アナログ両方のポートが アクティブになるというのが特徴です(基本的にはPIAFSプロトコルを 用いた無線通信を確立していますので、PHSを子機にすることもできます)。

ただし、IW50/D側の有線、RA10側の無線の同時通信については 制約が機器特有の事情により制約が課されています。 これに関しては、NECのサポートに電話することで初めて知ることが出来ました。 (モデムなどを使わない)デジタル通信で考えた場合、 IW50/DとRS10を使って考えられる接続パターンは以下の図の通りです。

IW50/DとRS10を用いたデジタル通信


RS10はIW50/DにPIAFSで通信しているのですが、これでは通常のアクセスポイント(AP)に 電話をしても繋がりません。そこでPIAFS専用APに接続するか、 そうでなければ、プロトコル変換モードというのを使って、 IW50/D側で通常の信号に変換してやる必要があります。

このプロトコル変換モードが結構曲者で、


プロトコル変換機能を利用すると、IW50/D側のデータポートは使えなくなってしまいます。 逆に言えば、IW50/Dが仲介者として代わりに通信してあげるモードであるとも言えます。 となると、結局(1)(2)のように、一方が通信するともう一方は使えなくなってしまう わけで、ISDNにしても全然意味がありません。(3)のようにPIAFSスルーモードを使えば、 RS10側はPIAFS専用APに接続できるのですが、PIAFS専用APというのは、 もともとPHSからちょっとだけアクセスするために作られたAPで、 たいがい 県に1つしか無かったり します。市外通話だし混み合うし32Kbpsだしで、全く良いことはありません。

そこで困り果てて、サポートのお姉さんに、これこれこういう環境で 使いたいんだ、といろいろ事情を話してみたところ、 「それでしたら、少しご面倒な形にはなりますが、一方をモデムを使った アナログ通信にすると、両方同時に普通のAPに接続していただけますよ」 というではありませんか。話をまとめると以下の図のようになります。

IW50/DとRS10を用いたデジタル/アナログ通信


つまり、ISDNの2回線同時使用ができないのは、プロトコル変換のせいであって、

アナログ回線としてなら問題なく使える


わけです。ということは、 一方が64Kbpsでデジタル通信していても、もう一方はアナログ56Kbpsで 別のプロバイダの普通のAPに接続できるというわけで…。 なるほど、モデムが別途必要となりますが、今まで使っていた モデムを使いまわせばいいだけのことで、 とっても理想的 ではありませんか。

ISDN導入開始

だいたいうまくいく目処がつきましたので、早速実行に移すことにしました。 まずIW50/DとRS10がセットになっている製品があるので、それを購入します。 ソフマップなどでは49,800円で売っている御時世に、秋葉原のZOAという お店でなんと42,800円で発見してすかさず飛びつきました(笑)

次にNTT(116)に電話し、ISDNへの変更を依頼します。 すると「いま回線を調べましたら、そちらの工事は必要ないですね。 NTTの交換機設定の変更だけですので、3日後にはISDNに切り替わります」 ということで、すんなり終わってしまいました。「切り替わってからは 普通の電話だけでは通じなくなりますので気をつけてくださいね」……なるほど。

いよいよ切替の日、仕事から戻ってみると自宅の電話が使えなくなっていました。 いよいよTAの登場です。TAがDSUを内蔵していますので、TAを噛ますことによって電話が…

つ、通じない…。


あれっ?と思ってマニュアルを見てみると、「通じない場合はNORMAL / REVERSEの スイッチを切替えてみてください」……??? 回線の特性か何かあるのでしょうか? リバースに切替えたらあっさり繋がりました。 その後の設定はIW50/Dに付属のユーティリティを使って、 いともあっさりと終了しました。 接続先をNIFTYのHyperRoad64(ISDNのAPのこと)にして接続すると…、 ちゃんと高速に繋がっています。接続速度が115,200bpsと表示されるのは どうも端末(IW50/D)との接続速度のことを言っているみたいなのですが、 あるサイトから大きなファイルをダウンロードしてみると、 ちゃんと65,000bpsくらいで繋がっていることが確認できます。 これでまずはISDN化、第一段階が完了です。

ダメダメじゃん、無線アナログ

さて、次の問題はアナログ通信との同時インターネットです。 ちなみに、同時デジタル通信はやっぱりダメなことが確認できました(笑) 仕様に逆らってはいけません。

アナログによる通信は、IW50/D、RS10どちらにもアナログポートがありますので、 そこに電話を繋いで電話を掛けるのと同じ要領で、モデムを繋いでAPに接続する だけです。まずはIW50/Dのアナログポートに56Kモデムを接続して試してみると、 ISDN化する前と全く同じ設定でそのまま接続することが出来ました。 接続速度は40,000bps。……、ん?ちょっと遅い…ですか。でもまぁ、 2人同時通信の時だけ使うモードとしては、我慢できる程度の速度ではあります。

ところが、「まぁこのくらいならいいか」と思いながら、次にRS10の方の ほうのアナログポートを試すと、なんと14,400bps という文字が……。

…いくらなんでも遅すぎません!?


「14.4Kでインターネット」、やってやれないことはないですが、WWWをガンガン使う ようですとストレスが溜って爆発するのは目に見えています。 そもそもこれって正常動作なんでしょうか? トラブルシューティングで 「モデムの速度が出ない」といったあたりを読んでみても、 別に設定が間違っている様子はありませんが…。しかし、これでは とても家族に勧める気にはなりません。

土日に実験作業をしていましたので、月曜日まで待って、仕切り直しに サポートに電話を掛けました(迷惑ユーザ状態(^ ^;)。 すると「IW50/D に関するご質問ですと、詳しい者に命じまして

こちらからお掛け直しさせていただく形になって


おりますけれども」と言われてしまいました。この間はちゃんとその場で答えて もらえたのに…。結局、仕方なく職場の電話番号を伝えて連絡を待つと、 指定した時間ちょうどに折り返し電話をもらえました。 すると何やら、RS10のアナログからの通信は通常が14.4K程度とのこと。 そして、Aterm特有のデュアルリンク無線通信を利用することで、 その倍くらいまでなら何とかなる、という話でした。 「当初と話が違わない?」 と思いながらも、まぁ無線アナログ通信だし、それで精一杯かな?という 感じもしましたので、納得して自宅で実験してみることにしました。

方法は悲しいほど簡単で、電話番号の最後に「*」(アスタリスク)を 付けるとデュアルリンクになります。ちゃんとマニュアルにも書いてありました(汗。 ところが56Kモデムを繋げて実験してみると、なんとプロバイダとのコネクションに 失敗してしまい、何度試してみても繋がりません。デュアルリンクモードって 本当に大丈夫?と不安になりながらマニュアルを見ていると、

特に高速モデムの場合は不安定ですので、
できるだけIW50/D側のアナログポートをお使いください。


なんて平気で書いてあって、おいおいおいおい、という感じです。

試行錯誤の結果、面白いことが解りました。 モデムをV.90モードあるいはK56Frexモードにしていると、 接続速度をいくら落としても繋がらないのですが、 V.34モード に設定すると全く問題なく繋がってくれるのです。 このV.34モードというのは、56Kモデムの規格ができる前の規格で、 33.6K接続を最高速とするプロトコルなのですが、これに変えた瞬間、 28,800bpsで通信することができました。

本来なら28,800bpsでも「遅い!」というところなのでしょうけど、 ここまでの経緯が経緯ですし、妥協ラインとしては手頃なところです…。 それにしても、モデムをこのV.34モードにするにはATコマンドで

「 +MS=11 」などという怪しげなコード


を指定しなければなりません。いや、そもそもV.34モードにすれば 良いと言うことも普通は気がつかないのでは…?もうちょっと何か マニュアルに説明があると嬉しかったです。 それとも、RS10からアナログモデムでインターネットするなどという 前提そのものが特殊なのでしょうか…。

良くも悪くも同時インターネット

というわけで、いろいろ苦悩はありましたが、なんとかISDNを使って 2人同時にインターネットをすることが可能になりました。 今回のようにIW50/DとRS10を使うと、IW50/D側が64Kデジタル通信をしている 場合はRS10側が28Kアナログ通信になりますし、RS10側が64Kデジタル通信を している時は、IW50/D側が40Kアナログ通信をすれば良いということになりまして、 まずまず、期待する環境に近いものは得られたと思っています。

IW50/DとRS10を用いたデジタル/アナログ通信


さて、インターネットしたいと言っていた兄ですが、 DIONにサインアップする前に、「別のプロバイダもいいな〜」と 悩み始めてしまったみたいです(^ ^;; 実際にバリバリ通信する日が 来るのは一体いつになるのでしょうか。それまで私がこの64Kデジタル通信 を独占しているのは間違いありません(笑)

 

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