PS3の値下げはあるのか? というニュースに思う「選択可能性」のお話

2007/07/08

日曜コラムです、こんばんは。
 
先日、こんなニュースがありました。
 
■PS3「間もなく値下げ」の噂が広がる
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0707/06/news056.html
 
北米でPS3の値下げがあるのではないか? というウワサです。
フル機能搭載の60GB版PS3の定価は599ドル。
これを100ドル値下げして499ドルにするのではないか、
その発表が7/10のE3で発表されるのではないか、という話が出ています。
そしてウワサの出所は、販売店のチラシに値下げ告知があったからとのこと。
 
販売店に対する告知というのは非常に気を使うもので、
どうしても実際のお客に値下げを告知するよりもワンテンポ早いタイミングで
告知しなければなりません。そうしないと、在庫を抱えていた販売店が
売り逃げする猶予を奪ってしまいます。
 
たとえば599ドルから499ドルに値下げするという情報が流れてきたら、
販売店としては、
 
 「値下げ決行日より前に、今ある在庫を569ドルで捌いておこう」
 
といった在庫調整が可能です。これがもし販売店もお客と同じ日に値下げを
知ったなどということになると、499ドル以上で仕入れたかもしれない
大量の在庫が、499ドル以下でしか売れない不良在庫になってしまいます。
(いや、PS3のお話ではありませんよ? あくまで一般論のお話ですよ?)
 
そういう情報が販売店に事前に知らされないと、「あのメーカは爆弾だ。
いつ突然の値下げをするか判らないから、怖くて在庫を持てない」という
レッテルを貼られてしまいます。これはメーカとしては重大な流通危機です。
たからこそ、どうしても事前に「販売店しか知らない裏情報」みたいな
ウソかホントか判らないような情報が流れるのはかなり自然なことです。
 
・・・・・話がちょっと逸れました。
 
■「PS3の値下げなし」とソニー社長
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0707/06/news079.html
PS3の価格を引き下げる「計画は現時点ではない」と
中鉢良治社長はReutersの取材に応えて語った。

ソニーの社長じゃなくてSCEの社長に訊けよと思わないでもありませんが、
中鉢氏が値下げの計画について否定的な回答をしていたとのことです。
 
実際に値下げが行われるかどうかはともかく、値下げ自身については
SCEの中で「検討すらされていない」ということはまずないでしょう。
ただ、上記のような値下げのウワサが、SCEの動きに呼応した何かから
発生しているのか、それとも全く関係のない自然デマのようなものなのかは
いまのところ不明です。7/10のE3で何かしらの発表があるのかどうかについても
まだ予断を許しません。(7/10って明日ですね。日本では7/11未明です)
 
ただ、「中鉢氏が値下げを否定した!」というお話について、
 
 「なーんだ、やっぱり値下げはしないのか」
 
という反応がネットなどでちらほら見られますが、さすがにこの中鉢氏の
発言はあまり真正面から真に受けないほうが良さそうな気がします。
 
この手のことを考えるにあたって、私はいつも頭の中で
1つの思考実験をします。これを「選択可能性の実験」を呼びましょう。
 
たとえばテレビで「食べ歩き」系の番組があったとします。
重大ニュースの日があった日もテレ東で黙々と流れているアレです(ぉぃ)
 
その食べ歩きをする芸能人たちは、いくつかのお店に行って料理を食べます。
見た目は確かに美味しそうな料理たちです。そこまでは視聴者もちゃんと
映像を見ているのですから、信頼できる自分自身の判断になります。
 
ではその先、画面に映った芸能人たちが言う、
 
 「おいし~~~~ぃぃ!!」
 「でしょ! すごいジューシーだよね!」
 
みたいな表現はどうでしょう? コレを見て「へぇ、凄くおいしいんだ!」
と素直に信じてしまうのはおそらく昭和の世代だけでしょう。
 
出演した彼ら芸能人たちに「選択可能性」があるかどうかを考えてみてください。
彼らはもし料理が美味しくなかったとして、「うわっ、これはちょっと美味しくないかも」
と言える選択肢があるでしょうか? そう、もちろんそんな選択肢は無いハズです。
仮に超正直な芸能人がそう発言したとしても、それは事後の編集でカットされて
しまい、お茶の間にはその言葉は届かないでしょう。
 
すなわち、この「おいしい」という言葉は、「おいしい」と「おいしくない」
の双方の可能性の中から選ばれたものではなく、「おいしい」の強制一択問題
から選ばれた言葉なのですから、その言葉には「料理がおいしかったのかどうか」
という情報は何も含まれていないことになります。
 
・・・ひどくわかり易すぎる例で辟易しているとは思いますが、
先の中鉢氏の「PS3は値下げしない」発言に戻りましょう。
氏の発言には、この「選択可能性」があったかどうか、というお話です。
 
すなわち、PS3の値下げの計画が実際に進んでいたとしたら、
中鉢氏は「えぇ、PS3を値下げする計画は進行中です」と言えるでしょうか。
先の「値下げはしない」という言葉は、「値下げします」「値下げしません」
という選択可能性の中から生まれたものではありません。
 
流通経路との情報交換のお話でも出しましたとおり、実際に値下げ計画が
進んでいるのだとしたら、販売店がちゃんと値下げ前の準備(在庫整理)を
遂行するまで、本当の末端顧客には値下げを悟られてはいけないからです。
 
ということは、値下げを考えていようがいまいが、氏は「値下げの計画はない」
といわざるを得ません。つまり、この発言は何も意味を含んでいないことになります。
我々は今までどおり「値下げ、あるかも」という考えを捨てられないワケです。
 
 
ゲームのお話にかこつけて、ちょっとした思考パターンの一幕を考えてみました。
今の時代、普段からこういう「選択可能性」の有無を考えるクセを自然体で
会得されている方も多いと思います。首相の発言も、あるいは身近な人の発言も、
こうした「選択可能性」の中で選ばれた言葉なのか、そうではないのかを、
何気なく考えてみるのも面白いかもしれません。


2007/07/08 [updated : 2007/07/08 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
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hidematu 2007/07/09
相手の言うことを信じるな、ではなく、相手の立場に立って考えろ、ということ。
wacky 2007/07/10
相手の発言に選択肢があったかどうか(=選択可能性)を考え、その発言に情報が含まれているか判断する。
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