ゲーム映像とアニメMADと著作権と「アシスト・ユース」というバランス

2007/07/22

日曜コラムです、こんばんは。
最近ちょっとだけ考えているのは、著作権の侵害度と経済的貢献度の
バランスというか、そういった感じのお話です。
 
■2005/11/06 [著作権とフェアユースとアシストユース? - あなたは誰と衝突するのか
著作権とフェアユースとアシストユース? - あなたは誰と衝突するのか]
法律はどうでもいい、とまでは言いませんが、法律のことと
同じくらい真剣に考えなければいけないこと、それは、
あなたの行為が誰かの利益と衝突していないかどうか
というポイントです。

■2006/07/18 [YouTubeと著作権 - ルール改変を迫るための社会的影響力
YouTubeと著作権 - ルール改変を迫るための社会的影響力]
ビジネス的利害関係に於いて、
自分を生かしたほうが良いと思ってくれる人と、
自分を消滅させたほうが良いと思う人の、どちらが多いか、
という比較が重要です。

 
「アシスト・ユース」というのは、意味はともかく名付けとしては
自分のオリジナル用語だったように理解しているのですが、
 
 「権利者に邪険にされないライン」を守ることが、
 
「法的にグレーなライン」を意識するよりはるかに重要なことである
というのがその基本精神です。法律というのは、対立したときに戦う
ルールのことであり、まず何よりも重要なのは対立状態にならないことである、
と言い換えてみたほうが判りやすいでしょうか。
 
 
実は、Forza2のMADをご紹介してきたのは、その伏線でした。
 
■Forza2 走行会の1つのスタイルになりつつある「ワンメイク・レース」
http://c-kom.homeip.net/review/blog/archives/2007/07/forza2_16.html
Forza2 走行会の1つのスタイルになりつつある「ワンメイク・レース」
 
ここにはForza2痛車走行会ワンメイクレースの映像が載っています。
著作権侵害の度合いという意味で見るべきポイントはどこでしょう?
厳密な意味で考えると危ない点は3つありますが気づかれましたでしょうか。
 
 1、ゲーム映像そのものにゲーム会社の著作権がある
 2、主題歌の音楽にアニメ制作会社の著作権がある
 3、ペイント内容にアニメ制作会社の著作権がある
 
の3点です。特に1のことは意外と忘れられやすいのですが、
ゲームのプレイ映像 というのは本来は著作権違反であり、
ゲーム会社が「黙認」をしている状態なのであります。
そのあたりはおさえておいたほうが良いでしょう。
 
さて、問題は侵害が「ある」「ない」なんて二元論ではありません。
オトナのビジネスとして、権利者がこれを苦々しく思うかどうか、
彼らの利益がこれらの作品によってどれだけ侵害されるか、
というお話です。そういう視点で見ないと、著作権のお話が
 
 実を伴わない単なる法律ゲームになってしまいます。
 
上でご紹介したForza2のMADは、上記の3つの問いに対するexcuseを
それなりに立てることを意識しています。
 
1、ゲーム映像はネタバレが無ければゲーム会社へのダメージは少ない。
  特にレースゲームは、映像は広告価値こそあれ、損害にはなりにくい。
 
2、主題歌は著しく音質が低くなっている。また、レース音との重ね合わせ
  を多量に含んでいるため、デッド・コピーする価値は低くなっている。
 
3、ゲーム内の車へのペイントは、アニメの売り上げそのものに影響を
  与えるような存在にはならない。イメージを損なうような絵柄も含まれていない。
 
いかがでしょうか。「ある」「ない」と法律だけに視点が向いてしまっている
方からすると詭弁の連続のように聞こえるかもしれませんが、本来、法的に
問題があることよりも先に「対立」があることのほうが問題にされるべきで、
ここでこうしたexcuseを意識して公開可否を決めることは大変重要です。
 
「ゲームの映像はアップして大丈夫?」といった漠然とした問いは、
常にケース・バイ・ケースであることも感じていただけると思います。
これは大げさな例ですが、
 
 ロールプレイングゲームにおけるラスボスの映像などは、
 
ちょっと公開するだけでもゲーム会社が「怒髪天を突く」状態になるでしょう。
YouTubeやニコニコにアップされている各種映像も、そういった視点で
 
 「これを見て権利者はどう思うかな。得かな。損かな。微妙かな。。。」
 
ということをいつも意識してみると面白いかもしれません。
 
たとえばアニメの1話ぶんをまるまるアップしている方がアウトなのは誰でも判ると
思います。それを「法律に違反しているから」などという「ルールはルールだもん」
みたいな論理ではなく、テレビ視聴率が減りそうだとか、その視聴率を取れそうな
テレビ局からの支払いがアニメ会社のお給料になってるとか、アニメDVDの売り上げも
落ちそうだとか、そういったリアルな商売的視点の影響度で感じられるようになれば、
誰の怒りを買いそうかということも肌で感じることができるでしょう。
 
じゃあ アニメMAD はどうかというと、それなりにexcuseはありそうです。
が、ゲーム映像のように軽い存在かというとそれもまた微妙です。
 
アニメMADはデッド・コピーの意味での損害はありませんが、代替品としての損害を
与える可能性が残っています。つまり、「MADで十分満足したから本編イラネ」
みたいな状態になることを権利者が恐れるストーリーはありえるワケです。
 
もちろんその逆に 「MADで興味を惹かれて本編を買いました」 みたいなケースも
出てくるでしょう。そのどちらもが真実であり、判断はつねにバランスの中にあり、
それはすべて社会の動向に左右されるモノであるわけですから、
学校のテストで答えあわせをするように「これはクロ! こっちはシロね!」みたいな
ことはできません。そういう議論に持っていくことは話の骨子を歪めることにもなります。
 
Forza2やアイマスの映像がネット上を飛び交う昨今ですが、たとえばゼルダやFFの
最近の作品のプレイ映像はあまり見られません。上に挙げたアシスト・ユースの
概念と共に、いろんな例題を考えてみるのも良いかもしれませんね。
 
関連:
 ■[ネタ]ニコニコ動画の経済波及効果は年間5億円超
 http://blogs.itmedia.co.jp/knowledge/2007/07/post_45ad.html
 ■404 Blog Not Found:究極のアフィリエイト、ニコニコ市場
 http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50877247.html


2007/07/22 [updated : 2007/07/22 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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