信頼を作る「ニンゲン」のページランク - 記号化とリンクファーム

2006/02/05

日曜コラムです。こんばんは。
 
今日は ニンゲンのSEO について考えてみましょう。
「ははぁ、SNSのリンク関係のことを言っているんだな?」
と想像をめぐらした方、まずますいいトコ付いてます。
が、実際はもうちょっと原始的なお話を考えています。
 
はてなのnaoyaさんが、Amazon成功の秘訣についてコトあるごとに、
 
 Amazonの強さの秘訣 は色々あるが、一番大きなファクタは
 物流革命でも、知的なリコメンドでもなく、SEOにある!
 
と声を荒げています。
 
■はてながこだわるWebサービス提供の本音
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000050150,20084185,00.htm
 
Google全盛期に入る中、信頼できる情報を浮かび上がらせる
アルゴリズムに 「ページランク」、つまり「リンクされた数」
を使うことが非常に有効であるという認識が一般化しました。
 
Amazonは、自らのネット上のポジションを上げるために必要なSEOが、
h1タグとか metaタグとかのキーワード選びという小手先の工夫ではなく、
 
 incomingリンクの獲得、つまり「リンクされる仕掛け」
 
の準備であることを理解していました。
そうして世に送り出されたのが、アフィリエイトとWebサービスです。
 
いかに沢山の人が気軽にAmazonへのリンクを張ってくれるようになるか、
それを追求するためなら、自社の虎の子の商品データベースを使わせても
構わない、売り上げの数%をアフィリエイター達に献上しても構わない・・・。
 
その思い切った策略は見事にヒットしました。Webの世界は今、見渡す限り
Amazonアフィリエイトで溢れています。AmazonはWebサービスの公開と引き換えに、
ノドから手が出るほど欲しかった「incomingリンク」を星の数ほど獲得したのです。
 
 
AmazonのSEOの件を引き合いに出したのは理由があります。まず、
 
 「incomingリンク」を大量に持つものは信頼される
 
という現象は、世界の普遍的ルールであるという論説があります。これはご存知、
バラバシ著「新ネットワーク思考」(原題: Linked) で詳しく語られています。
Googleの「ページランク」も、根っこは同じところからヒントを得て作られたものです。
 
だいたいSEO、SEOと言いますが、Google自体がそもそも、人間の「信頼感覚」を
アルゴリズムとして実装しようとしたものです。SEO=Search Engine Optimization
というと、「Googleの仕組みがそうなっているから、それを先回りして・・・」という
 
 人間とは関係ないところで行われているプログラム同士の戦い
 
のように思えてしまうかもしれませんが、それは正しい認識ではありません。
Googleがあろうとなかろうと、人々はincomingリンクを沢山持っている人を見て
無条件の信頼を抱いてしまいます。Googleの検索を一度も使わない人でも、
毎日毎日多くのWebページでAmazonへのリンクが張られているのを見れば、
 
 「Amazonっていろんな人からリンクされているんだー、信頼あるんだねー」
 
と信じ込んでしまいます。むしろGoogleがこの「信頼感覚」のほうに沿うように
アルゴリズムをチューニングしている、と考えるのが正しい解釈です。
 
 
では、本題に戻りましょう。
ビジネスに於いて、信頼はとは「ブランド」です。信頼は「宝」です。
信頼はお金に還元できる大切な資産です。その信頼というものを、
 
 「ニンゲン」としてのincomingリンクをいかに獲得できるか
 
という視点で考えて見ましょう。そんなことを考えたきっかけは、
梅田さんのイベントの参加者リストを改めて見直してみたことでした。
 
■My Life Between Silicon Valley and Japan
「「ウェブ進化論」: あとがきの一部、発売日の東京でのイベント」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060130/p1
 
主役の梅田さん、はてなの川崎さん、そして特別ゲストのGREEの山岸さん、
Passion for the future の橋本さん、マーケティング社会時評のR30さん、
ネットコミュニケーションの視点の徳力さん、それにガ島通信の藤代さんも
参加されるとの情報がご自身のブログで公開されています。
 
でも、みなさん正直におっしゃってください。この面子、
 
 「最近、ブログ界隈で良く見る組み合わせだなぁ~」
 
と思いませんでしたか? 更にネタフルのコグレさんとか、百式の田口さんとかが
加われば百人力です。「無敵会議」であったり、「Japan Blogger Conference」
であったり、ルーツはある程度想像できるのですが、アルファブロガーと呼ばれる
方々が今、「群」としてのメディア露出を高めているのがよく判るのです。
 
「なんだなんだ、イベント直前に喧嘩売ってるのか!」と思われるでしょうが、
モチロンそんなつもりはありません平謝りでごめんなさい( ̄▽ ̄;)m
単なる事象のいち考察ですから、その程度の感覚でお読みください。
 
 
Amazonの例で私は、自分の持っている価値ある情報をさらけ出すことで、
incomingリンクを獲得できるというお話をしました。人間関係でいえば、
 
 「あの人から聞いたんだ」
 「あの人なら知ってると思うよ」
 「あの人がやってたよ」
 「あの人が・・・」
 「あの人は・・・」
 
そういう何かにつけて名指しされる存在になるということです。
そういう露出が増えていけば、「あの人が言っているから信頼できるよ」
という「信頼感覚」を誘発することができます。言ってみれば、
 
 「ニンゲン」としてのページランク(=被参照機会)
 
が向上するのです。そしてそれは前述のとおり「信頼」として換算されます。
 
Amazonが取ったSEOのことを考えてください。次にすべきことは、
いかに 「自分へのリンクを作りやすい状態にするか」 ということです。
Amazonに於けるWebサービスの公開のような超効率的な手段はありませんが、
とりうる手段はいくつかあります。
 
ニンゲンの露出を高め、効率的にリンクしてもらうには、自らを記号化し
また記号化されたものに結び付け、そして多くの人と記憶を共有することが求められます。
「話題(イベント)」の提供と「権威(団体)」の確立がそれに当たります。
 
1人1人はブロガーという小さな存在です。こう言っては失礼ですが、
橋本さんが「ブログ: Passion for the future の管理人」という立ち居地で
獲得できる信頼というものは、それほど巨大なものではないでしょう。
しかし、「無敵会議」「Japan Blogger Conference (JBC)」の主催者・メインパネラ
という立ち居地はブログ管理人とは違います。それは橋本さんの関係するイベントが
素晴らしいからであることはもちろんですが、それはここでは置いておいてください。
 
問題は リンク「する」側 のことなのです。「無敵会議」「JBC」という「記号」が、
 
 橋本さんのことを説明する手間を、どれだけ省いてくれるか
 
考えたことがあるでしょうか。上で「話題(イベント)」の提供と「権威(団体)」
の確立と言っていたのはまさにこのことです。そしてそのリンクコストの低下が、
被リンク数にどれだけの影響を与えるか、考えてみてください。
 
Amazonがいかに気軽にリンクを張ってもらうかを追求したように、ニンゲンも、
incomingリンクを増やすためには、その「リンクされ易さ」を追求していく必要が
あります。その伝播速度を大幅に促進するのが、自分自身の「記号化」というワケです。
 
「ホリエモン」が記号化された名称を持つことも、楽天が「球団を持つ」ことも、
全てが「被リンク機会の増大」を図るための手段だと考えることができます。
被リンク機会が増大するということは、信頼感覚が誘発されるということです。
 
SEOになぞらえて、もう1つポイントを挙げましょう。
今は残念ながらライブドア・ショックが発生中ですが、いわゆる「ヒルズ族」は
 
 相互参照共同体(リンクファーム)を築き上げることで
 
記号化を図ってきました。堀江さんや藤田さんをはじめ、ヒルズ族は
互いの繋がりが非常に緊密であったと聞きます。彼らは局所的には
敵同士になることもありますが、大局的には、
 
 「ヒルズに居を構えるIT新鋭ベンチャーたちは、
  未来の社会を作る、若くて期待できるパワーだ」
 
というメッセージを発するという視点では協力し合ってきました。
もし、意図的に価値のないものにリンクをしているのであれば、
これはまさにSEOで言うところのスパム的なリンクファームとなりますが、
実際には大筋として互いの価値をちゃんと認め合って互いを参照し合って
いるとすれば、健全なリンクファーム、リンク群という認識でよいでしょう。
 
アルファブロガーという「群」に関しても、リンクファームとして機能する
可能性を考えてみてください。もはや何度もイベントで顔をあわせている
アルファブロガーの方々は、相互参照のコストが低く、相互参照のメリット
(共通の記号価値を高めるメリット)は大きいという状態にあります。
 
たとえばJBCというトライにしても、ご本人たちが意識していようがいまいが、
「日本のブログ界の頂点」という 「演出効果」が記号化されて 発信されています。
それがまた被リンク機会を増やすキッカケとして機能するとしたらどうでしょう。
 
 
「ニンゲン」のページランクという視点で社会を眺め回してみると、
他者からリンクされる機会を作るために、リンクされやすい環境を
整えるということが、いかに重要であるかがよく判ります。
露出機会を増やし、自らを記号化して、被リンクを増やすには、
「誠実な努力」が必要なのは勿論のこと、それ以外にも、
 
 舞台のことを知り尽くした「役者」としての資質
 
が求められているような気がしてなりません。自らが如何にして記号化されるかを知り、
記号化され易い演出を心がける・・・、それはアクセス解析で己を知り、
リンクされやすいコンテンツを考えるWebのSEOと、何ら代わりはないのです。


2006/02/05 [updated : 2006/02/05 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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wacky 2006/02/06
「incomingリンク」を大量に持つものが信頼されるというSEOの原則を、人間の信頼関係に当てはめて考えてみる。
terazzo 2006/02/06
Amazonアフィリエイトリンクってアフィリエイター毎にURLが違うのでSEOになってなくない?/いやサイトのランクは上がるのか
dodolaby 2006/02/06
いかに沢山の人が気軽にAmazonへのリンクを張ってくれるようになるか、それを追求するためなら、自社の虎の子の商品データベースを使わせても構わない、売り上げの数%をアフィリエイター達に献上しても構わない
fukken 2006/02/06
人間も他人に「参照」されやすくする事でPagerankを上げる事ができる
ken_wood 2006/02/07
>Googleがこの「信頼感覚」のほうに沿うようにアルゴリズムをチューニングしている、と考えるのが正しい。incoming・被参照機会を作りやすい状態、自らを記号し、多くの人との記憶を共有、「話題」の提供と「権威」の確立
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