録画サイクルと削除サイクル - バッファとしてのディスクレコーダ

2005/09/04

日曜コラムです、こんばんは。
東芝のHDDレコーダ RD-H1 の発売から5ヶ月が経とうとしています。
我が家のRD-H1は今日も元気に録画を繰り返しています。
 
皆さまもご存知の通り、RD-H1は DVDドライブを搭載しない 代わりに
格安を実現したちょっと特殊なHDDレコーダです。DVDドライブを搭載しないという
コンセプトだけ見ると往年のSonyの名機「コクーン」シリーズと似ていますが、
1つだけ大きく違う点は、「ネットdeダビング」 という機能によって、
LAN経由で映像データを他のRDやPCに吸い出せるという点でしょう。
DVDドライブが無いと言いつつ、いざという時には他の機器に移して保存もできるという
「保険」を備えた レコーダだからこそ、RD-H1は爆発的なヒットを記録したのです。
 
さて、ここで問題です。私が5ヶ月間、RD-H1を使用し続けている中で、
 
 外部にデータを転送して保存しようと思ったケース
 
は、一体どれだけ有ったでしょう?
 
正解は、「競馬のみ」でした。
私は競馬マニアですから、JRAの重賞レースを全て録画保存しているのですが、
それ以外には、RD-H1の外に吸い出された番組は ほとんど皆無 であります。
実は私、メインのHDDレコーダをRD-H1に変えてからというもの、
 
 新規のDVD-RAMメディアを1枚も購入していないのです。
 
これはDMR-HS2、RD-XS40を利用していた頃と今では、全くといって良いほど
利用スタイルが異なってきていることを意味しています。
そう、DMR-HS2やRD-XS40を使用していたあの頃、私は確かに、
積み重ねられた DVD-RAMに埋もれて 生きてきたハズなのです。
 
では一体何が変わったというのでしょう。
コクーン以来のHDDレコ信奉者の方々はこうおっしゃいます。
 
 「DVDレコーダなんて言ったって、何だかんだ言っても
  ほとんどの番組は 『見たら消す』 の繰り返しなんだよ。
  DVDドライブなんて実際は有っても無くても同じだよ、同じ。」
 
私は確かに、この考えを身を持って実践していることになります。
外部メディアに保存しない、保存したいという欲求に駆られない、
そして、HDDの残り容量が少なくなってくると、端から番組を消して
空き容量を確保し、また次の番組を録画するという繰り返しが続くのです。
 
では、こんな主張はどうでしょうか?
 
 「どうせ見たらすぐ消すんだから、
  HDD容量なんて、いくら大きくても仕方が無いっしょ。」
 
映像を徹底的に綺麗に録画して、永久保存版として残しておきたいマニアな人は、
綺麗な映像を大量に録画できるように、大容量HDDのレコーダを買えばいい、
でも「見たら消す」のお手軽な使い方をしたい人は、そんな大容量は必要ない、
HDD容量の少ないエントリモデルで何も困ることはない、と、そんな論旨です。
 
一見、先の「DVDドライブは必要ない論」と、この「大容量HDDは必要ない論」は
主張的に同じターゲットに向けられているお話のように聞こえます。しかし、私は
RD-H1を手にしてから変化した録画ライフサイクルのことをずっと考えていました。
 
DMR-HS2やRD-XS40を使っていたときと、今とは一体何が違うのだろう?
どうしてDMR-HS2やRD-XS40を使っていたときには、大量のDVD-RAMに
囲まれてまで、録画データを貯め込もうとしていたのだろう?
 
そう考えた末に、私が導き出した答えはコレでした。
 
 「大容量HDDは 『見たら消す』 の実践に必要不可欠な要素である。
  小さな容量のHDDでは 『見たら消す』 を実践することは難しい。」
 
これはちょっとした発見でした。
シンプルな録画生活を送りたい人ほど、HDDは大容量であるべきなのです。
 
 
そのポイントは、録画から消去に至るまでの判断のメカニズムに在ります。
 
通常、録画した番組が「保存の必要がない」と判るまでには、ある一定の時間が
掛かります。まず最初に、録画した番組を初めて観賞するときのことを考えて
みましょう。その番組にはまず1回目に脳内でフラグが立てられます。
 
 A) とても面白い! → これは 絶対に保存 しておこう!
 B) まずまず面白い → 一応、消さないで とっておくか・・・。
 C) 全然面白くない → さぁ、消去、消去 っと。
 
「見たら消す」、そう簡単に言いますが、実際に見たら消せる番組というのは、
ここでいうCランクの番組だけです。Aランクはモチロンのこと、録画した番組の
ほとんどを占めるBランクのデータは、全てHDDの中に残り続けることになります。
 
冒頭で述べたとおり、実際には「将来のために長期間保存しておきたい」
番組など、ほとんど存在しないのです。しかし何故ここでBランクのデータが
消せないのかというと、答えはまさに、
 
 「判断のための時間が足りない」からです。
 
残しておけるものなら、残しておくに越したことは無い、だってもし、後で
見直したいと思ったらどうするのだ? と自問自答した結果、Bランクの映像は
この時点では「消すという決定が下せないまま生き残る」データとなります。
 
では、これらのデータに対して、実際に消すか否かの判断が下されるのはいつでしょう?
そのサイクルは、私の場合で言えば、約2~3ヶ月を要しています
2~3ヶ月の間、一度も見直そうと思わなかった番組、2~3ヶ月経ってもやっぱり
「残すほど魅力的ではない」 という判断に変わりが無かった番組は、
きっとこれからも見たいと思うことはないだろう、という判断があり、
 
 そこでようやく消去に踏み切れる
 
のです。加えて言えば、番組の魅力を決めるパラメータの1つに「新鮮味」と
いうものがあり、映像が新鮮味を失えば失うほど、消去しても良いと思う可能性は
高まっていきます。初見のときにはAランクに位置づけられていた映像も、
数ヶ月経てばあっさりと「消しちゃえ!」に変わってしまうというワケです。
たとえば「プロジェクトX」のある回が凄く面白いと感じたとしても、4ヶ月後に
それを見ると「何かもう消しちゃってもいいかな~」と思えてしまうものです。
 
しかし、実際問題、私たちが消去の判断を迫られる時期というのは、2~3ヶ月と
いった時間的な制約で決められるものではありません。消去の判断を下すのは、
 
 HDDが満杯になってしまったとき
 
です。それ以前でもそれ以後でもありません。だとしたら、どうなるでしょう?
 
HDDが満杯になった時点で、HDDの中に「既に消去に踏み切れる覚悟の付いたデータ」
が大量にあれば、それを消していけば良いことになります。Bランクは次々と脱落
していき、Aランクのデータもその多くが「消去組」にまわされていることでしょう。
大量にデータを削除した結果、また次の番組を録画することができるようになります。
 
ところがもし、録画し始めて1ヶ月めくらいでHDD容量が満杯になってしまった場合は、
今まで録画した番組を「消去してよいかどうか」という判断がまだ十分に下せず、
迷いが生じている時期です。この時期に強制的にデータの削除を迫られることになると、
ユーザは危機意識を感じ、保存本能に駆られた結果、最後の切り札として、
 
 泣く泣く、外部メディアに保存を試みるのです。
 
すなわち、外部メディアが必要になる条件というのは、
 
 「HDD満杯サイクル」が、「削除判断サイクル」より短い
 
場合にのみ発生するのです。だからこそ、HDD容量は重要な決め手になってきます。
同じ番組数を録画するなら、HDD容量によって、必要になる外部メディアの量が
大幅に変わってくるかもしれないのです。
 
これはPCのメモリの仕組みに良く似ています。十分な容量のメモリがあれば、
その中だけでやりくりが可能であり、スワップ領域はほとんど使われません。
しかしメモリ容量が少ない場合、PCはスワップ領域を大量に使うことになります。
言ってみれば、HDD容量は個人の録画ライフをサポートするバッファ領域であり、
このバッファが十分に大きければ、削除と再利用を繰り返すことで
外部領域をほとんど必要としない生活 が送れるようになるのです。
 
元に戻って考えてみましょう。
DMR-HS2は40GB(80GBに拡張)、RD-XS40は120GBのHDDを搭載していました。
RD-H1は250GBのHDDを搭載しています。私の録画サイクルの場合、
 
 120GB→250GBのところが、ちょうどこの臨界点だった
 
のかもしれません。みなさんも、HDDレコーダの購入を考える上では、
こうした録画サイクルと削除サイクルの兼ね合いのことを頭に入れた上で、
少しでも大きいHDDのものを選ぶほうが良いかもしれません。しかし往々にして
大容量HDD搭載機種は、それ以外にも大量の機能が付いていて、高価になっています。
その意味でも、RD-H1という「安価なのにHDDだけ大容量」という機種が何故ここまで
愛されているのか、こうしたことからもお判りいただけることでしょう。
 
さて結果的には、「HDDが大きいとこんなに嬉しいよ」という何気ないお話に
まとまったように思えるかもしれませんが、これを逆に取って考えるとちょっと
恐ろしいことになります。すなわち 「メディアカートリッジを売りたい企業」
というのは確実に居るワケです。バッファとしてのHDDを有効に活用した場合、
こうしたメディア販売ビジネスは果たしてどのような影響を受けることになるのでしょうか?
 
ここからは皆さまのご想像にお任せすることにしましょう・・・。


2005/09/04 [updated : 2005/09/04 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
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kinow 2005/09/05
そのとおり
wacky 2005/09/05
HDD容量が大きければ大きいほど外部メディアに残す必要があるかどうか判断しやすくなる、という話。
shidho 2005/09/06
それはそうかもしれない、とPCで似たような問題になっている自分は思う。
John_Kawanishi 2005/09/28
そうだったのか!!最初に買ったHDDレコがRD-X5だったけど「見たら消す」で済んでいるのは600GB大容量のお陰だっ
bigburn 2005/10/02
思い当たる(笑)
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▼ コメント ▼

No.1620   投稿者 : もちゃ   2005年9月 7日 00:05

始めまして、c-kom様。

ネットで"NAS"と"HDD"と"録画"をキーにこちらへ飛んできました。
記事を見て共感してしまい、こちらのファンになってしまいました。
早速ブックマークです(笑)

CanopusのDNT-888LもNAS絡みで期待外れに終わり途方に暮れております。
突き詰めるとやはりRD-H1になるのでしょうか。
お持ちの様ですので羨ましいかぎりです。

これからも拝読させて頂きますので宜しくお願いします。

それでは、もちゃでした。



No.1646   投稿者 : CK   2005年9月14日 01:17

●もちゃさん
はじめまして(・▽・)ノ もしかしてご自覚が無いかもしれませんが、
"NAS"と"HDD"と"録画"をキーに検索される時点で私と同類の「デジ狂」です(笑)
NASを活用したソリューションは少ないですね~。「Link de 録!!」も同社製NASのみですし。
単なる再生機としては、「MOVIE COWBOY」がNAS上のデータを直接再生できる点で注目です。



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